3割特例の計算方法を具体例で解説 簡易課税・本則との比較

最終更新: 2026年9月30日(制度の基準日: 2026年9月29日、令和8年度税制改正後)。インボイス発行事業者である個人事業者(暦年課税期間)向けの一般的な解説です。

結論から

3割特例は、個人事業者の令和9年分・令和10年分について、納付税額を売上税額(売上対価の返還等を差し引いた後の消費税額)の3割に抑えられる経過措置です。仕入れの税額を集計する必要はありません。この記事では、国税庁の付表6の様式に沿った計算の流れと、3つの具体例での本則課税・簡易課税との金額の違いを示します。制度の位置づけは解説記事「2割特例の終了と3割特例」へ。

3割特例とは

  • 対象: 個人事業者である適格請求書発行事業者の、令和9年及び令和10年に含まれる各課税期間。法人は対象外です。
  • 内容: 売上税額の7割を特別控除税額として差し引けるため、納付税額は売上税額の3割になります。
  • 手続き: 事前の届出は不要です。確定申告書の付記事項欄に「8: 3割特例」と記入し、付表6を添付します。簡易課税の届出を済ませている方も、その年の申告で選べます。
  • 対象となる条件: 免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受けたこと等により課税事業者となった課税期間に限られ、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であることなどが必要です。当てはまるかどうかは国税庁Q&A問115-2または税務署でご確認ください。

計算の流れ

税込みの売上から計算する場合(割戻し計算)の流れです。

  1. 課税標準額: 10%の税込売上を110分の100、8%(軽減税率)の税込売上を108分の100にして、それぞれ千円未満を切り捨てます。
  2. 課税標準額に対する消費税額: 10%分は課税標準額×7.8%、8%分は×6.24%で、それぞれ1円未満を切り捨てます(国税分)。
  3. 売上対価の返還等に係る消費税額を差し引き、「基礎となる消費税額」(売上税額)を出します。
  4. 特別控除税額: 基礎となる消費税額の70%です。付表6では税率区分(10%分・8%分)ごとに1円未満を切り捨ててから合計します。
  5. 納付税額: 基礎となる消費税額から特別控除税額を引き、100円未満を切り捨てた額が国税の納付税額です。地方消費税は、この国税額×22/78を100円未満切り捨てして求めます。

税率区分ごとの切り捨てのため、特別控除税額は総額の7割と1円ずれることがあり、100円単位の切り捨ての境目では納付税額が変わる場合があります。

具体例1: 10%のみのサービス業

令和9年分、サービス業(簡易課税の第5種、みなし仕入率50%)、10%の税込売上550万円、課税仕入れ(税込・適格請求書あり)110万円、売上返還なしの例です。課税標準額は500万円、消費税額は390,000円です。

方式控除の額国税地方消費税合計
3割特例273,000円117,000円33,000円150,000円
簡易課税(第5種)195,000円195,000円55,000円250,000円
本則課税78,000円312,000円88,000円400,000円

この例では3割特例の試算額が最も小さくなります。本則課税の控除額は、課税仕入れ110万円×7.8/110の78,000円です。

具体例2: 10%と8%が混在する小売業

令和9年分、小売業(第2種、80%)、10%の税込売上330万円、8%の税込売上216万円、10%分の売上返還11万円(税込)、課税仕入れ(税込)は10%分220万円・8%分140万4,000円の場合です。課税標準額は10%分300万円・8%分200万円、売上税額は358,800円から返還分7,800円を引いた351,000円になります。特別控除税額は、10%分(226,200円の70%)158,340円と8%分(124,800円の70%)87,360円を合計した245,700円です。

方式控除の額国税地方消費税合計
3割特例245,700円105,300円29,700円135,000円
簡易課税(第2種)280,800円70,200円19,800円90,000円
本則課税237,120円113,800円32,000円145,800円

この例では簡易課税の試算額が最も小さくなります。本則課税は、国税113,880円を100円未満切り捨てした113,800円です。

具体例3: 仕入れが多い場合

例1と同じ売上(10%の税込550万円)で、課税仕入れ(税込・適格請求書あり)が440万円の場合、本則課税の控除額は312,000円、国税78,000円、地方消費税22,000円で、合計100,000円です。3割特例の合計150,000円より小さくなります。

有利不利を考える一般的な視点

  • 3割特例は、みなし仕入率70%の簡易課税(第3種)と同じ税額になります。事業区分が第3種なら同額です。
  • みなし仕入率が70%を超える簡易課税(第1種・第2種)は3割特例より納付税額が小さくなり、70%未満(第4種から第6種)は3割特例のほうが小さくなります。
  • 本則課税は、売上税額に対する実際の課税仕入れ等の税額の割合(例1は20%、例2は約67.6%、例3は80%)が70%を超えると、3割特例より小さくなる傾向があります。
  • 3割特例・簡易課税は、通常、還付が生じません。多額の設備投資などで仕入れの税額が売上税額を上回る年は、本則課税でのみ還付となり得ます。
  • 簡易課税は届出が必要で、原則2年は継続します。期限は解説記事「簡易課税制度選択届出書の提出期限はいつまで?」と届出期限ナビで確認できます。

以上は一般論で、どの方式を選ぶべきかを示すものではありません。事業区分の判断は個別の判断です。ご自身の数字での比較は方式比較ツールで試せます。4方式を選ぶ順番は解説記事「2割特例・3割特例・簡易課税・本則課税の選び方」で整理しています。

注意

注意したい点(要確認を含む)

  • 本記事の例は割戻し計算で、複数事業の按分、中間納付、貸倒回収、免税事業者等からの仕入れの経過措置を含みません。
  • 簡易課税の2年継続の期間中に3割特例を適用した年の数え方は、明文を確認できていません。税務署へご確認ください。
  • 特定期間の判定、相続、高額な資産の購入などで適用の可否が変わることがあります。税務署または税理士へ。

一次資料

本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断・税務相談ではありません。最終判断は税務署または税理士へ。