2割特例・3割特例・簡易課税・本則課税の選び方 判断のポイントをフローで整理
最終更新: 2026年9月30日(制度の基準日: 2026年9月29日、令和8年度税制改正後)。インボイス発行事業者である個人事業者(暦年課税期間)向けの一般的な解説です。
結論から
選べる方式は、まず年分で決まります。そのうえで有利かどうかは、売上税額に対する実際の仕入税額の割合と、みなし仕入率の比較に行き着きます。この記事は、4つの方式を選ぶ順番を一般論として整理したものです。特定の方式をおすすめするものではありません。適用できるかどうか、どれが有利かの最終判断は、税務署または税理士にご確認ください。
4方式の比較表
| 方式 | 対象・条件 | 事前届出 | 計算の考え方 |
|---|---|---|---|
| 2割特例 | 令和8年分のみ。免税事業者が登録を機に課税事業者になった課税期間などの条件があり、基準期間の課税売上高は1,000万円以下 | 不要(確定申告書に付記) | 売上税額(売上対価の返還等を引いた後)の2割が納付税額。仕入れの集計は不要 |
| 3割特例 | 令和9年分・令和10年分のみ。条件は2割特例と同趣旨 | 不要(確定申告書に付記) | 売上税額の3割が納付税額。仕入れの集計は不要 |
| 簡易課税 | 基準期間の課税売上高が5,000万円以下 | 必要(原則は適用する年の前年12月31日まで)。原則2年は継続 | 売上税額にみなし仕入率(90%から40%)を掛けた額を仕入控除税額とする |
| 本則課税 | 課税事業者であれば対象 | 不要 | 売上税額から実際の課税仕入れ等の税額を引く。差引がマイナスなら還付 |
判断の流れ(5つの確認)
- 年分を確認する: 令和8年分は2割特例、令和9年分・令和10年分は3割特例が候補です。令和11年分以降は2割特例・3割特例の軽減がなく、簡易課税か本則課税になります。個人事業者の令和8年分には令和8年9月30日が含まれるため、国税庁の年表でも2割特例の対象です。令和8年10月以降に登録した場合の取扱いは、明示的な案内を確認できておらず、要確認です。
- 免税事業者からの登録かを確認する: 2割特例・3割特例は、免税事業者が登録(または課税事業者選択届出書の提出)により課税事業者になる課税期間が対象です。もともと課税事業者だった人は対象外です。特定期間、相続、高額な資産の購入などの細かな条件は、国税庁のQ&Aか税務署でご確認ください。
- 基準期間(2年前)の課税売上高を確認する: 1,000万円以下は特例の条件の一つ、5,000万円以下は簡易課税の条件です。5,000万円を超える年は簡易課税を使えず、本則課税になります。
- 事業区分を確認する: 簡易課税のみなし仕入率は、第1種90%、第2種80%、第3種70%、第4種60%、第5種50%、第6種40%です。2割特例は80%、3割特例は70%の簡易課税と同じ税額になります。事業区分の当てはめ(卸売か小売か、製造か加工賃かなど)は個別の判断です。
- 仕入税額率と比べる: 売上税額に対する実際の課税仕入れ等の税額の割合(仕入税額率)を出します。本則課税は、この率が比べる相手(特例の80%や70%、簡易課税のみなし仕入率)を上回るときに納付税額が小さくなります。下回るか同じなら、特例や簡易課税のほうが小さいか同額です。
みなし仕入率どうしの比較は次のとおりです。3割特例と簡易課税では、第1種・第2種は簡易課税が小さく、第3種は同額、第4種から第6種は3割特例が小さくなります。2割特例と簡易課税では、第1種は簡易課税が小さく、第2種は同額、第3種から第6種は2割特例が小さくなります。特例・簡易課税は通常、還付が生じません。多額の設備投資などで仕入税額が売上税額を上回る年は、本則課税でのみ還付となり得ます。
どの年にどの方式が選べるか(早見表)
| 年分 | 2割特例 | 3割特例 | 簡易課税 | 本則課税 |
|---|---|---|---|---|
| 令和8年分 | 条件を満たせば選べる | 対象外 | 届出が間に合えば選べる | 選べる |
| 令和9年分 | 対象外 | 条件を満たせば選べる | 届出が間に合えば選べる | 選べる |
| 令和10年分 | 対象外 | 条件を満たせば選べる | 届出が間に合えば選べる | 選べる |
2割特例・3割特例は課税期間ごとの選択で、適用しない年は本則課税か簡易課税で申告します。簡易課税の届出を済ませていても、その年に3割特例を選べます(国税庁の特集ページに「一般課税又は簡易課税での申告」とあります)。ただし、3割特例を選んだ年が簡易課税の2年継続の数え方にどう入るかは、明文を確認できていません。税務署へご確認ください。
注意したい点(要確認を含む)
- 届出の期限: 簡易課税の届出は、原則が前年12月31日、2割特例・3割特例を適用した翌年からの場合は翌年の申告期限までと分かれます。状況別の整理は解説記事「簡易課税制度選択届出書の提出期限はいつまで?」、日付は届出期限ナビで確認できます。
- 端数と計算例: 課税標準額は千円未満、国税は100円未満で切り捨てるなど、端数の扱いで金額が変わります。具体例は解説記事「3割特例の計算方法を具体例で解説」にあります。
- 適用後の変更: 2割特例の手引きには、適用した申告後に修正申告や更正の請求で適用・不適用を変えることは原則できないとあります。3割特例も同様かは確認できていません。
- 対象外の範囲: 課税売上高5億円超、課税売上割合95%未満、複数事業の按分、積上げ計算、中間納付は本サイトの試算の対象外です。
- 仕入れの経過措置: 免税事業者などからの仕入れは、令和8年10月から令和10年9月まで仕入税額の70%を控除できます。本則課税の計算でのみ関係します。
数字で比べるには
売上と仕入れの見込みを入れると、4方式の試算額を並べて見られます。方式比較ツールをご利用ください。年分ごとの背景は解説記事「2割特例の終了と3割特例」にまとめています。入力内容は端末内で処理され、外部へ送信されません。
一次資料
- 国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(リーフレット)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice-review/pdf/0026004-099-01-1.pdf - 国税庁 令和8年度税制改正特集ページ
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice-review/index.htm - 国税庁 インボイスQ&A 問115-2(3割特例の適用できない課税期間等)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/115-2.pdf - 国税庁 インボイスQ&A 問117-3(3割特例より簡易課税が有利な場合・簡易課税の届出)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/117-3.pdf - 国税庁 インボイスQ&A 問115(2割特例の適用ができない課税期間)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/115.pdf - 国税庁 インボイスQ&A 問7(免税事業者の登録の経過措置)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/07.pdf - 国税庁「2割特例用 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き」(令和7年11月版)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0023008-043.pdf - 国税庁 タックスアンサー No.6505 簡易課税制度
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6505.htm - 財務省 令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/20251226taikou.pdf - 財務省 所得税法等の一部を改正する法律案(第221回国会)本文
https://www.mof.go.jp/about_mof/bills/221diet/st080220h.pdf - e-Gov法令検索 消費税法施行令(みなし仕入率: 57条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/363CO0000000360 - e-Gov法令検索 租税特別措置法(個人事業者の確定申告期限: 86条の4)
https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務判断・税務相談ではありません。最終判断は税務署または税理士へ。